新井所長の経験談

2022年8月25日

患者さんに支えられてきた看護師歴35年

看護師になって35年、患者さんからたくさんの事を学びました。

病棟では色々な年齢の方と話をしました。
歴史の教科書に載っている様な体験をした患者さんにはリアルな話を教えてもらったり。
人生の先輩たちに咤激励され涙したことも数えきれません。

そんな患者さんに支えられているのに、業務に追われゆっくりとケアすることも難しく、話を聞く時間もほとんどありませんでした。

  • 病院は治療をするところであり、早期に退院させなくてはならない。
  • 自宅に帰りたい患者さんの想いも分かる
  • でも帰ったら誰が介護してどうやって過ごすんだろう?

といつもモヤモヤを抱えていました。

訪問看護の世界へ

そんな時、家族の勧めで訪問看護の世界へ。
実習もした事もなく、怖さも知らず、分からないことが分からない状態で方向転換して飛び込みました。
でもそこで気づいたんです。

訪問看護ってすごく楽しい!

患者さんの望んでいることに気づき、生かされているのではなくて、生きているのだなと感じました。

自宅に帰るまでには心の準備も含めて沢山の用意が必要です。
環境も整えなければなりません。
たくさんの職種の方と協力して連携をとって退院します。

そんな沢山の用意を経て自宅に帰れた患者さんたちは、本当に喜んで手を合わせて拝みます。
自分の家に帰ってきただけなのに・・・

  • 訪問看護なら、自宅に帰ったその後をケアできる!
  • 患者さんとゆっくり向き合える!
  • 患者さん一人ひとりに向き合って、望んでいることに気づき、一緒に解決策を模索する。
    訪問看護こそ、真の看護なんじゃないか?!

と思い、そこからは訪問看護の楽しさにすっかり魅了されてしまいました。

訪問看護だからできた、自宅で迎える幸せな最期

たくさんの素敵な思い出がありますが、中でも印象的なエピソードを1つ。
80代男性、癌の末期。娘夫婦、孫3人。娘が父親の癌の末期を知って娘宅に退院させました。

私たち看護師はほぼ毎日の清潔ケア、痛みや全身の観察、本人が話したいときにいつでも聞ける姿勢を保ちつつ、娘さんやお孫さんとも仲良く信頼関係を築き上げていきました。
家族たちはいつでも明るく、お父さんのことを見守り看護師のケアは必要ないほどでした。

そんなある日、突然状態が悪化。
血圧低下、脈もほとんど触れることができなくなりました。

「耳元で声かけよう。ありがとうって話そう。みんなが一人ずつ、耳元で!」と私も自然と言っていました。
「おとうさ~ん。ありがとう。もう大丈夫だよ。安心していいよ~。」
「じいじ、ありがとう。元気にするよ~。」と。

そういって涙した後は、みんななぜか?笑っていました。
保育園から小学生の孫たちはじいじの寝ているベッドに上がり、ぴょんぴょんと飛び跳ねているのです。

私が「何しているの?」と聞くと、孫たちは

「だって明日はこのベッド片づけるんでしょう? 今のうちに、トランポリン!」

そこにいた大人たちは大爆笑!
私は思わず「スマホで動画撮っておくわ~」
娘さんは「こんなのってありえないよね、素敵。お父さん良かったね」

大人たちは泣き笑いし、子供たちはいい加減にしなさいと、娘さんに怒られていました。

今でも思い出す、素敵な在宅看護でした。

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